2023/07/10公開 ニュース

青野紗穂、音楽劇「ダ・ポンテ」で世界三大悪妻・コンスタンツェを熱演し話題に! 役作りのこだわりに迫る。 「コンスタンツェの女性としての成長を見ていただけたら」


女優の青野紗穂が、9日から16日に上演の東京公演の音楽劇「ダ・ポンテ モーツァルトの影に隠れたもう一人の天才」へ出演中だ。

本作は、モーツァルトのオペラ作品の台本を手掛けた男の人生を描く。
青野は、世界三大悪妻として知られるモーツァルトの妻・コンスタンツェを演じ、抜群の歌唱力と、歴史上ではなかなか語られていなかった、真っ直ぐにモーツァルトに寄り添う姿が話題を呼んでいる。

青野は、2012年にN.Yアポロ・シアターで開催されたプロへの登竜門と言われている人気イベント「Stars of Tomorrow」のボーカルコンテストで優勝し、「歌うまティーン」として、注目を集めた。
その類まれな歌唱力を活かし、2015年より音楽劇「人魚姫」に初舞台ながら初主演に抜擢されると、以来「RENT」、「SOHO CINDERS」「ヘアスプレー」など、多数の人気ミュージカル作品への出演を続け、着実にその独自の存在感を放っている。

今回は、ミュージカル界の歌姫として実績を残し続けている青野が、コンスタンツェを演じるため取り組んだストイックな習慣や、ミュージカル女優という仕事への想い。さらに、声優を始めとする青野の多様な仕事やプライベートまで、インタビューを実施した。
・本作の見どころを教えてください。

青野:まずは何といっても、主演の海宝さんの伸びやかな本当に綺麗な歌声に注目です。
また、今まで海宝さんは素敵な男性の役を演じてきていらっしゃると思うんですが、今回のダ・ポンテは、一言でいってしまえばクズな役なんです。(笑)

でも、一概に嫌えない妖艶な魅力があったりだとか、言葉を巧みに操る素敵なシーンがあって、そこでみんなが一時の幸せをもらえるという、魔法使いみたいなセクシーな役なので、海宝さんのファンの方は新しい海宝さんが見れるという点で、本当に素晴らしく、「はぁ~」とため息が出てしまうような魅力があります。
また、本作はクラシカルな物語ではあるんですけど、今を生きる人にもすごく響く話だと思います。
自分がやりたいことをしなければならないのか、世間に求められていることを果たさなければいけないのか、など普通に生きていてもあるような葛藤や、そこを支えていく女性の生き様などなど…。人としてどういう選択をして、どのように生きていくのか、というのをすごく感じれる作品なので、そんな「人の強さ」を表現しているのが見どころになってくるのではないかと思います。


・青野さん演じるコンスタンツェの注目ポイントはありますか。

青野:作中に、ダ・ポンテとの直接的な関わり合いがないので、逆に言えばコンスタンツェの人としての成長が1番見えやすい役ではあるのかなと思います。
幼い女性がちゃんと世帯を持って、子どもを持って、お母さんとなった時の愛情の表し方の変化だったりとか、一人の女性としての成長を注目して見て頂ければ嬉しいなと思います。


・「ダ・ポンテ」のカンパニーは仲が良いなと、プレビュー公演までの取材会で感じました。稽古中からこれまでのカンパニーの雰囲気はいかがですか。

青野:みんな良い意味で"我関せず"であり、でも自分の道を突き進むだけの人ではなくて、色んな状況を加味しながら動かれるバランサーの人が多いんです。すごく居心地良く、楽しく毎日を過ごせていますね。


・稽古は、公演や作風によって、全然違うのかと思いますが、どのような雰囲気で過ごされましたか。

青野:稽古前に自分が思っていたよりも、ほんわかした空気の中稽古をしてきました。
ただ、役として、こうしていきたい!や、ここをもっと掘り下げたい!というディスカッションの時間をしっかりと取っていて、そこに頭を悩ませながら、「ん~!」と考えている時間はかなりありました。
でもその時も、カンパニーのみんなで考えて、「その場面がこの方向性に変更になったのであれば、私たちはこっちの方向にシフトしていくべきだよね」とか、自主的に考え、発信していく方が多くて、すごく充実していました。

また、「今、これで悩んでいます!」ということを隠さない方が多かったです。
分からないことに対して、全面に稽古場でシェアをしてくださる方々が沢山いらっしゃったので、私もとても分かりやすく稽古に集中出来ました。

本作の演出、青木豪さんは、役者をフィーチャーしてくれるというか、役者の考え方を認めてくださいました。
でもご自身のこだわりや軸もしっかりされているので、ここは絶対こう魅せたい、こういう仕草が欲しいというのも、はっきり言ってくださって、本当分かりやすく、取り組みやすい現場でした。
・主演の海宝さん、平間さんの姿を見て、学んだところなどはありましたか。

青野:海宝さんは、絶対に妥協しないんです。
なので、通し稽古が終わって、舞台稽古に入った段階でも、「これを変えたいです」とおっしゃり、本番でも色々チャレンジをする方なんです。

どこまでも掘り下げて、より良いものにしようとされている姿が素晴らしいなと感じました。
海宝さんの芝居や姿がみんなに良い影響を与えるのが分かっているからこそ、海宝さんが感じた違和感に対して、共演者やスタッフも動いてより良い作品にしようとみんなで作っていく。
海宝さんは、人を動かせる力を持っていて、尚且つ、違和感を感じたことは絶対に曲げないというのが、役者として、人としても素晴らしいなと日々感じています。

壮ちゃん(平間さん)に関しては、「RENT」(2017年)からなので、とても長い付き合いなんですけど、彼は、海宝さんと真逆で、基本的に道筋を立てずに、お芝居するタイプの方なんです。すごく感覚的というか、だから毎回マチネとソワレでも全然お芝居が違ったりだとか、その日によって感じるところや、フックをかけてくる部分が違ったりで、一緒にお芝居をしていてすごく楽しいです。

なので、毎回新しいものとして出来るんですよね。
それこそ、今作のコンスタンツェは、モーツァルトを支える役なので、手に取るように、彼が今どんなところで悩んでいるのか、今日はすごく調子が良いなとかが、とても感じ取れるんです。
それは、壮ちゃんが、自然体で感覚的だからだと思います。
今回は、ダ・ポンテとモーツァルトの配役としては、ピッタリだなと思っていました。


・青野さんは俳優としてのタイプはどう思っていますか。

青野:私は、海宝さん寄りの壮ちゃん(平間さん)なんだと思います。(笑)
私もけっこう細かく自分で考えたり試行錯誤して、道筋を立てていくのですが、最終的には稽古や本番で感じたことを参考に、変更したりだとか、その感じたものを利用して作っていくタイプですね。

全てを感覚で出来るほど、繊細ではないので、今回のダ・ポンテでいったら、海宝さん寄りの平間さんというような役作りをしているんだろうなと思います。
また、私はけっこう調べることが好きで、いつもお家に帰ったら、歴史物などを調べて書いていますね。(笑)


・そうなのですね。本作も歴史物の作品になりますが、青野さん演じるコンスタンツェについても調べられたりしたのですか。

青野:そうですね!
コンスタンツェの出生から亡くなる頃までの生き方と、そこに関わってきた人たちの関係性などを調べ上げました。
それこそ、コンスタンツェがモーツァルトと結婚したのは、8年くらいしかないのですが、その間に8人の子どもを産んで、生き残っているのは2人だけなんです。
それも、強い子でないと生き残れないというようなご時世なんですけど、そういうのもあって、コンスタンツェがどのように変わっていくのかとかを調べていきました。
モーツァルトも、一年中世界中様々なところに飛び回っている関係で、稼いでも稼いでもお金はなくなっていくんですよ。
その上で、コンスタンツェが、どういう風にやり繰りをして生活をしていたのかはかなり調べました。
史実にあるように、コンスタンツェはさんざん散財をしていたのに、なぜ愛がある人だったと言われるのかと言うと、お金がいくら無くなっても、モーツァルトの譜面だけは売らなかったんですよ、絶対に。
本当にどうしようもなくなってしまって、最後の最後に手放しちゃったことはあるみたいなんですけど、それまではどれだけお金がなくても絶対売ろうとはしなかったんです。
そういうところを見たりすると、やっぱり愛がある人なんだなと思いました。

史実や歴史を勉強することによって、台本に書かれていない彼女の人間性や大事にしているものや成長している部分がわかると自分の役作りのためになるというか、良い影響を与えてくれるので、時代背景も含めて調べるようにしています。


・すごいですね。なぜそこまでするようになったのですか。

青野:私は知らないのが怖いと感じるんです。昔から分からないところに飛び込むのが怖くて。
全部理解することは難しいですけど、ある程度理解すれば、何が起こっても柔軟に対応出来るというか、ある程度の知識があれば、ある程度のことは解決出来るじゃないですか。
そこに安心感を覚えてしまうんですよね。
・シアター1010でのプレビュー公演から、愛知公演を振り返っていかがでしょうか。

青野:プレビュー公演の時は、お客さんがどういう反応をしてくださるのかとか、これでいいのかみたいな不安を全キャスト持っていたと思うんです。
堅い話ではあるし、音楽劇なので、楽曲で話が進んでいくというより、心情の説明を音楽ですることが多く、ミュージカルを見慣れている方からしたら、少し停滞しているように見えるのではないかとか。
また、話がわかりやすいか、共感しれもらえるかなど、不安なことは沢山あったのですが、蓋を開けてみたら、意外と皆さんすんなりと受け入れてくださって、シアター1010公演が終わった時は、一回ひと安心だねと思えました。

そこから名古屋公演からは、皆さんが受け入れてくださるということと、カンパニー全員の仲が良いこともあって、どのようにして団結しながら深めていき、私たちのスキルも止まらずにいれるかなどを考えて過ごしていました。
お客さんに見ていただくにあたり、もっと見やすく、感じやすいものにしていこう!というモードになっているので、着実にみんなで前を向いて歩けています!


・青野さん自身2015年からミュージカルに出始めてから、成長を感じる部分と、課題だと思う部分はありますか。

青野:まず、成長したなと思う部分は、視野が広がったことと、物事を繊細にキャッチすることが多くなりました。
というのも、色んな役を演じていく中で、色んな人の追体験をしますし、役を作る時に、様々な情報を得て、追求していかなければならない。
なので、些細なことでもキャッチしようとする力がすごく付いてきて、感受性豊かになってきました。
課題としては、お芝居は正解がないので、自分らしいお芝居を作っていけたらいいなと思っています。
私がやるからこの役が素晴らしくなるとか、私がやっているから光るというように思っていただける女優さんになりたいなと思います。
まだまだ上を目指して、頑張りさないね!といつも自分に言い聞かせています。(笑)


・ミュージカル女優以外の仕事については、どのような展望をお持ちでしょうか。

青野:私自身、声優のお仕事を特に広げていきたいなと思っています。

でも、私はやりたいことが沢山あるんです。
声優としても広げていきたいと思いますし、舞台でのスキルも色んな役を経て、どんどん上げていきたいなと思いますし、あとは、舞台用のコスメブランドを立ち上げるのも夢!
あとは薬膳の資格や、メンタルケアアドバイザー、トリマーの資格などにも興味があります。

また、近い将来、ミュージカルを目指している人たちへのメイクレッスンであったりとか、お芝居や歌い方のお話などを、講義のような形でやってみたいなと思っています。
私自身、初めてミュージカルの世界に入った時、とても不安だったんです。
最初は先輩方に聞くのも怖くて。だからこそ、現場での細かい動きのことまで講義形式で伝えられる場があったらいいなと思っています。


・ありがとうございます。最後に、東京公演、大阪公演に向けても意気込みをお願いします。

青野:東京公演は、また新しい会場にもなるので、不安も少しはありますが、シアター1010でのプレビュー公演からパワーアップした私たちを見ていただき、沢山何かを感じていただきたいです。
最後の大阪に向けて、言葉には表せないけど、素晴らしいね!と思われるような、全員が粒立つような舞台にしていければなと思います!


ありがとうございました!

本公演は、9日から16日まで東京・東京建物 Brillia HALL(豊島区立芸術文化劇場)、20日から24日まで大阪・新歌舞伎座で行われる。

ミュージカルの世界に飛び込み、自らの実力でしっかりと歩みと進める青野が、本作でコンスタンツェの人物背景を史実や歴史を活用し、とことんまで突き詰めている演技は必見だ。
<青野 紗穂プロフィール>
1997年10月19日、兵庫県出身。
エイベックス主催「キラット☆エンタメ・チャレンジコンテスト2007」でモデル部門の特別賞を受賞し、芸能界入りすると、2012年、アポロ・シアターの「アマチュア・ナイト」の子供部門「Stars of Tomorrow」で優勝。2015年、音楽劇「人魚姫」で舞台初出演。2021年にはアニメ「ワッチャプリマジ!」で声優デビューも果たした。

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