2018/09/15公開 ニュース

『仮面ライダービルド』挿入歌3曲の新バージョンを収録 X21最新シングル「デスティニー」発売記念! クリエイター座談会/第1回

『仮面ライダービルド』が繋いできた縁は、貴水博之のニューアルバム「Gimmick Zone」を経て、X21の最新シングル「デスティニー」へ。今回は3月から始まったこの連載の締めくくりとして作詞、作曲、編曲で各作品に携わってきたats-、清水武仁、渡辺徹、BOUNCEBACK(河出&竹内)、大西克巳、日比野裕史、leonn、森月キャス、Mio Aoyama、丸山真由子、桑谷実沙の12名のクリエイターが集結。『ビルド』の挿入歌のリミックスも含む、これまで明かされなかったエピソードなどなど、クリエイターの観点からざっくばらんに語り合っていただきました。

文:トヨタトモヒサ

Ready Go!!~Burning My Soul~Evolution ~Accelerated X Linking 21st build mix~

――まずは『仮面ライダービルド』の挿入歌2曲とそのカヴァーを、ひとつに纏めた「build mix」について伺えればと思います。

ats-:最初、この曲のサウンドプロデューサーから、3人(ats-,清水武仁&渡辺徹)でつくった「『ビルド』の挿入歌を1曲に繋げてほしい」と振られたのですが、僕の第一声は「ムリです」と(笑)。なぜムリかといえば、似たような曲を繋ぐ事なら容易に出来るのですが、テンポやキーが全然違うため、それをやるとなると異様に難易度が高い。ただ「このプロジェクトの集大成としてどうしてもやって欲しい」と熱い想いをぶつけられまして(笑)。それで「じゃあ、なんとかその無茶ぶりを形にしてみましょう」と、挑戦の意味も込めて楽しんでやらせていただくことになりました。

渡辺:確かに、今ats-さんが仰っていたように、各曲ともテンポ感が全然違うので、僕もこれは難しそうだなと思いました。でも、ボーカルデータを上手く加工して非常にスムーズな流れを形作っていましたね。

ats-:ええ。普段はなかなかボーカルデータはいじらせてもらえないですからね。リミックスならではという事で。もともとのAXL21の歌が良い感じで歌えていたので加工映えしましたね。
――実際にリミックスする上で取り組みはいかがでしたか?

ats-:単に曲を繋ぐだけなら、「DJ MIX」みたいなことで成立させられますが、今回はリアレンジもという事だったので、オリジナルのイメージは残しつつも、僕のオリジナリティが反映されていると思います。既にオリジナルを聴いているファンの方にも「あ、違うバージョンじゃないか」と印象に残る形にしたかったんですね。まず、「Ready Go!!」に関しては、オリジナルはロックテイストの中に分数コードでオシャレな感じにも聴こえていましたが、リミックスに関してはストレートに分かりやすいロックにしました。

渡辺:オシャレなコードがストレートになっていて、より力強くなっているのでライブ映えしそうですね。

ats-:オリジナルは、コード楽器をオルガンにしていたのですが、今回はピアノにコード楽器をやらせて、ストリングスで裏メロを取ることで、オリジナルとはまた違ったロックテイストに作り上げました。

渡辺:僕はリミックスされた曲の中では、「Ready Go!!」が一番好きですね。歌詞の聴こえ方や意味合いがオリジナルとは違った意味にも聴こえてくるから不思議です。

ats-:あまり難しいコードではないけど、突き抜けた感じは大事にして作ったつもりです。

清水:各曲を繋ぐ過程で一曲目の「Ready Go!!」を原曲よりヴォイシングをシンプルにして行くあたりの手法は効果的だと思いながら聴きました。わかりやすくなったことで「Evolution」に繋ぐためのうまい伏線になってますよね。

――そして、次が「Evolution」ですね。

ats-:「Ready Go!!」と「Evolution」ではテンポとキーが違うので、ボコーダーの声で一瞬ブレイクさせることで、テンポとキーを分からなくして繋いでいます。「Evolution」のアレンジに関しては、割とDJミックス的な方向性で前半はオリジナルに近い感じですが、終わり方を変えてみました。90年代後半に流行っていたブリストルサウンド、トリップホップ系にしようと思い、ここで世界観をガラッと変えて、すごくテンポの早い「Burning My Soul」になります。サイドチェーンをかけて、打ちっぱなしなのですが、次のテンポに自然に繋がるようにしました。キーに関しては、不自然にならなかったので、そのまま繋げています。

清水:「Evolution」自体がとてもリミックス映えする楽曲ですよね。ats-さんがブリッジごとにアイディアを具現化してくれたように「Ready Go!!」で持たせたアプローチからうまく「Evolution」でリミックスらしく遊べるところまで広がって行っているように感じられました。
――「Burning My Soul」には、J-CROWN & TaKu from 1 FINGERバージョンと、貴水博之さんのアルバム「Gimmick Zone」に収録されたats-、清水武仁&渡辺徹 Feat.貴水博之&AXL21バージョンの2つ存在しますね。

ats-:このリミックスでは、「貴水博之&AXL21」バージョンに近いアレンジになっています。

BOUNCEBACK 竹内:出来上がったats-さんのリミックスの音をいただき、クリエイターチームの皆さんとしばらくの間「カッコいい!」と言い合いつつ、時間が過ぎました。

ats-:ありがとうございます!

BOUNCEBACK 竹内:それと今回のリミックスで、AXL21が歌っている部分って、「貴水博之&AXL21」バージョンでは聴けない部分がふんだんに入っているんですよ。
特に掛け合う箇所は、誰と誰がかけあっているか等、X21のファンの皆さんも楽しめる内容になっていると思うし、『ビルド』で知った方々も、3バージョンを聴き比べてもらえると、すごく面白いんじゃないかと思いますね。こんなに短期間で3バージョンを楽しめる事も滅多にないのでそこも楽しんで頂けると作り手としては嬉しいですよね。

――で、「Burning My Soul」から再び「Evolution」へ。

ats-:ここでサウンドプロデューサーから♪Burning My Soulのコールを重ねて欲しいと言われたんです。ただそれだとつなぎ目を自然に聴かせることが出来ず上手くいかない。彼はそれをわかった上で言っている訳だから、僕への期待を込めて言っているのがわかるので何とかしたいと思い、曲の最後、打ちっぱなしで終ったときのdelay感は三連で回して、テンポを分からなくてして、「Evolution」のテンポのシークエンスに重なるようにして、透明な感じにしつつ、繋げていきました。

BOUNCEBACK 竹内:ここ、とても好きなんですよね。「Burning My Soul!」って叫ぶとは全く知らなかったですし、絶妙なタイミングで入るんだなって。

ats-:グラニュラー・リバーブを長くかけて、フリーズ感をつけつつ、一瞬テンポ感が消えるかなと思ったところで、「Evolution」の後半に繋げると。

BOUNCEBACK 竹内:溶け込ませるために、そんな苦労があったなんて。そこまで
してくださって本当に有難く思います。
――「Evolution」は二回使われていますね。

森月:元々、表と裏と二面性の世界観を持つ楽曲で、今回のリミックスでは、「Burning My Soul」を隔ててそれが二つに分かれていて、全く別の世界観を形作っている感じを受けました。

ats-:オリジナルは、敵キャラでありながら、主人公を鍛えるイメージや、感情を持つ事、更に言ってしまえば今後の展開や、戦兎や万丈のメッセージになり得るように二面性を意識した組曲のような構成になっているんです。ですから、その二つはどうしても入れたいと思いました。

森月:オリジナルを知ってるからこそ、リミックスの素晴らしさが分かると思うので、オリジナルもしっかりと聴き込んでほしいなと。そういう思いがより強くなりましたね。リミックスとは言うもののその言葉の響きから想像するマニアックなサウンドとは全然違っていて、もうひとつのオリジナルと言っても過言ではない仕上がりになっていたので。

ats-:「Evolution」の後半のアレンジは、僕的に狙ったのは90年代の小室サウンドブーム後の00年代初頭のサウンド感。ちょっと懐かしいJ-POPを作ろうかなって。終わり方は、元々は割とクラウディな感じで作っていたのですが、そこはやっぱりX21のシングルに収録されるということで、ちょっと明るくした感じです。元々、僕はHΛLというグループでリミックスもちょくちょくやらせていただいていましたが、その頃の作りに似ているかな。

丸山:とてもステキでした。以前私もHΛLに在籍していた時期もありますが 、ats-さんとは時期が違っていて当時の接点はなかったんです。もちろん、ats-さんがいらっしゃった頃のHΛLは知っていたので、「ああ、これは紛れもなくats-さんのピアノだな」と思って聴かせていただきました。

ats-:和音階をちょっと使ってみました。

丸山:そこがまさに大好きなところですね。オリジナルはラストでこの先何かが起こりそうな終わり方をしていましたが、リミックスでは感動的なエンディングのパートになっていますよね。
日比野:マスタリングの際に聴かせてもらったのですが、まぁ、素晴らしい出来栄えで、仕事を忘れて聴き入ってしまいました。ats-さんがつくるサウンドはすごいですよね。一気にその世界観に引き込まれます。完成時サウンドプロデューサーも号泣してましたからね。この1年色々あった事は知っているので、きっと想いが溢れちゃったんでしょうね。

ats-:この曲のサウンドプロデューサーは僕らにとってのディレクターでもあるのですが、時に彼からたくさん直しを入れられることもあってそれは「すごく気に入ってるからこそ、もうちょっとこうすればもっともっと好きになれる」って気持ちの表れだから、そこはいつも頑張って応えられるようにしています。

Mio Aoyama:このリミックスはエグゼイドから続いてきた我々のプロジェクトのある意味、集大成ですよね。各曲の繋ぎも好きですし、アレンジもめちゃくちゃカッコ良くて、冒頭の0秒から1秒聴いただけで「カッコいい!」って状態になれる。これは感動しましたよ。

渡辺:タイトルにもこだわりがあって、サブタイトルのAccelerated X Linking 21st build mixの大文字部分をまとめるとAXL21になる。これは英語に長けている作詞家のleonnさんまで来てもらって考えたタイトルで、まさにチーム総動員でつくった感じですね。英語は僕らの絆が加速していく的な意味合いで。ちなみに21は21バージョンつくったという説もありますが(笑) 僕らにとっても忘れられない作品になりましたし、それぞれのファンの方にどうしても聴いて頂きたいと思ってしまうほど気持ちの入っている音源です。

デスティニー

via www.youtube.com

X21 / デスティニー MUSIC VIDEO

――ここからは、X21のシングル曲「デスティニー」についてうかがえればと思います。

森月:歌詞自体はコンペを経て決まったのですが、元々、大西さんがデモを作る段階で仮歌詞を書いていたんです。その後、Dメロを付けることになり、何を書こうか迷ってディレクターに電話をした所、色々な想いをぶつけられまして(笑)、採用になるまでは内緒にしていたのですが、そこに気持ちを動かされて9割くらい書き上げていた歌詞を捨てて、ほぼ全てを書き直しました。

大西:ちょうどフルサイズを作る段階で、A&RプロデューサーのHさんからDメロを付ける案が浮上したんですよね。それでディレクターに相談してアイディアを出してもらいながら、メロを完成させていきました。

森月:最初に入っていた、「キラキラ」と「デスティニー」は、元々の私のテイストにあったワードですね。

――では、その「デスティニー」が結果的にタイトル曲になったわけですか?

森月:ええ。でも、発注を受けた段階ではあまりシングル曲であるという事は意識しなかったんですよね。普段、私個人としては、シングルはファンではない方にも届くように心掛けていて、c/wはファンの方の心をくすぐるフレーズを意図的に入れるようにしていて、要は書き方が全然違うのですが、この曲に関しては、そこは自分の中で見えてなかったんです。それもあってX21が歌い、A&RプロデューサーのHさんからのイメージである社会人や今を頑張っている人達やこの曲を聴いた同世代の人がハマってくれたらな、と思って書きました。

大西:作曲者としては誰かがアレンジをしてくれる事を前提にして、今回はHさんが求められていたわかりやすいメロディというのを重視してつくりました。デモのフレーズなどは生かしつつ、完成した作品を聴いた時にこう来たかと良い意味で驚きました。
――日比野さんと渡辺さんに編曲についてもうかがえればと思います。

日比野:二人の分担に関しては、私がベーシックな部分を固めて、シンセやストリングスといった「うわもの」は相談しながら進めていきました。

渡辺:僕は隙間というか、ちょっとしたフレーズで埋めていった感じですね。特に今回は主にそういった部分で拘りました。

日比野:歌詞では、良いこと悪いことを含めて、前向きに次に繋がっていくといった内容が歌われているし、ディレクターからも「単純にバカ明るい歌にはしたくない」と言われていました。デモの段階では、可愛らしく分かりやすいポップス感があったので、安心から不安の要素を入れたいと思い、コード進行を、循環コードを避け、なるべく解決しないような流れを作るところから取り掛かりました。

渡辺:アグレッシブなストリングス……特にDメロの弦のフレーズが好きなんですけど、基本的にシンセ以外は生なので、ゴージャスな仕上がりになりましたね。あとキーワードを挙げるとしたら「ジェットコースターミュージック」かな(笑) 運命と言う名のジェットコースターに乗っているイメージ。イントロで滑車が一番高い所まで上がってそこから物凄いスピードで走りだす感じ。1番と2番の平唄では主人公が過去の風景を思い出しているんですよね。その上でメッセージ性の強いDメロがあって未来に向けての最後サビに続いていく。だから曲が終わっても、まだその先に続いているんですよね。だからもう1回聴きたくなる(笑)
――今回、生楽器を入れたのは何か狙いがあったのでしょうか?

日比野:やっぱり、打ち込みより得意な表現が絶対にあるんですよね。特にアーテイキュレーション(※演奏による強弱や様々な表情)は、口頭でイメージを伝えるだけで、ミュージシャンの方に具現化してもらえますからね。ストリングスなんかは、とりあえず弾けるか弾けないかはさておき、後は現場で相談すればいいやと書いてみたんですけど、弦奏者の矢野小百合さんチームはものすごいスキルで無茶なフレーズも見事に弾いてくださって。ブラスに関しては、米米CLUBにも参加している佐々木史郎さんのチーム。ブリッジとかイントロで印象的なフレーズをやっていく形ですが、ブラスの役割は力強さと煌びやかさで、それをエキサイティングなストリングスの間に挟んでいけたらな、という感じで書きました。そして何よりも心強いのはメンバーの山木コハルさんのお父様が有名ドラマーの山木秀夫さんで、このチームの作品にはいつでもご協力頂ける事。山木さんにお願いさせて頂いた事で安心感と想いが更に足されたと思います。まさに総動員でつくりあげたオケです。

ats-:やっぱり生楽器隊ですよね。しかも森元さんがミックスされると、完全に洋楽のような肌触りになっていて、そのなんとも不思議な「森元サウンド」がすごく印象的です。

丸山:弦やブラスの生感はホントにゴージャスですよね、私自身が関わる楽曲でもそういう機会を増やして行きたいです。

渡辺:このチームが面白いなと思うのは、気がつくとみんなが一生懸命になっている事。録りのエンジニアの岩田さんやミックスの森元さんまで徹底的にアイディアを出してくれる不思議な現場で結果的にX21の表題曲では、最も沢山の人が関わり、最も時間をかけた曲になっているはずです。

日比野:その分みんなの思い入れも強いし、きっと制作費も凄くかかっているはずで。 歌録り後のスタジオでこの先どうしていくのかディスカッションをするのですが、みんなお金の事も時間の事も考えず、とにかく作品のクオリティをいかにして上げるかと言う事だけを考えて発言をする(笑) よく言えばクリエイティブな現場、悪く言えば無責任な発言の数々。でも完成した音源を聴くとそれらがいつの間にか実現されているという(笑)

BOUNCEBACK 河出:大西さんの曲ってかっこいいよね。だからこそより色々な可能性が広がっていくような気がします。
――クレジットを拝見すると、ギターとベースは日比野さんが自ら演奏されているんですね。

日比野:元々アレンジする際には自分でもよく弾くほうなんですよ。ベースは動くところは動き、支えるところは支える役割で、特にメロの邪魔しないところでは動いたほうがドラマティックになるかなと。ギターはガンガンにロックテイストを出すというよりは、逆にちょっと支える側に回るイメージで弾いていますね。ギターと言えば余談ですが、同時期に制作をしていたaccessの貴水博之さんの「Gimmick Zone」もこのタイミングで作っていて、「Gimmick Zone」のギターは「デスティニー」の歌録り後、貴水さんのご要望に応えるべくディレクターとスタジオに残って弾いていたんですよね。貴水さんのライブMCでも仰ってましたが、最初のタイミングでA、B、Cパターンを弾き、次のRecが終わったタイミングでDパターン、Eパターンを弾いたりしてこの夏のとても濃い思い出です(笑)

――共同での編曲作業についてエピソードはありますか?


日比野:当初はブラスをフィーチャーする方向性だったのですが、そこは徹さんと相談していくうちに、弦に重きを置く形になったんですよね。あと、言い方は難しいけど、「徹さんなら、きっとここはやってくれるだろう」って信頼感は確実にあります。

渡辺:逆もあります。「空けておいたら、日比野さんが埋めてくれるだろう」って。実際、ちゃんと埋まっていましたし。

日比野:やっぱり徹さんがやったほうが作品力が上がると思う部分は、期待してわざと空けて置くんですよ。それは直接は言わずに(笑)。

渡辺:(笑)。

――作詞に関しても、もう少し踏み込んでみたいと思いますが。

森月:運命って、ポジティブな意味合いだけじゃなく、「これが運命か」みたいに諦めの言葉としても使うことがあると思うんですよ。でも、私としてはそう使って欲しくない思いがあり、たとえ挫折する瞬間があっても、次へ向かうスタートだと思えば、いい意味での運命に変わるわけじゃないですか。そういったメッセージを込めたつもりです。そこはDメロが一番分かりやすいんじゃないかと思います。Dメロが出来た瞬間に一気にこの曲が動き出したように感じたんですよね。音も歌詞に合わせて変化していて2Aなんて、渡辺さんがレッスン場の風景を想像して流れる汗をイメージしてピアノを入れてくれたりして、作詞家冥利に尽きるといいますか、チームでやっているからならではの音作りだと思いました。
――「キラキラ」に込めたものとは?

森月:これも「デスティニー」と同じく、色々なものが表現できる言葉だと思うけど、ホントに輝いていてキラキラしていることはもちろん、頑張っている人の汗のキラキラだとか。他にも本当はそうなりたいのになれない自分が憧れているあの人のキラキラとか。「キラキラ」は同じフレーズだけど、X21の皆さんは、そこをきちんと歌い分けてくれていて「あ、ちゃんと意味合いが違うキラキラになってるな」と感じたんですよ。聴く側もそこに注目してもらえると面白いんじゃないかと思いますね。

丸山:確かに、「キラキラ」ひとつで表現出来ることは沢山あるんだって思います。改めてそこを意識して聴き直したいです。

森月:でも、そのアイディアは最初の下りの電話での会話から産まれたもので、みんなの想いが凝縮されたのは真ん中の火種が熱かったからだと思いますよ。たとえば、1Aは怒って歌っているように聴こえるし、1Cの「未来はいくらでも変わる」、2Cの「あきらめない」からは意志を感じるし、Dメロは1行、1行で感情が入れ替わっているようにも聴こえる。そういった細かい部分の拘りも是非聴いて頂きたいですよね。あ、あともうひとつ。これはディレクターから聞いた話ですが彼が録るようになった「現実から逃げるから現実がツラいんだ」からは最後サビの歌は上手さよりも気持ちを大事にしたテイクを使ったり、歌っているメンバー全員の顔が浮かんでくるような音作りをしているらしいのですが、今回の「デスティニー」も最後サビだけずっと真ん中にいた歌が左右全体に広がるんですよね。それによって一人一人のキャラが見えやすくなっている。

日比野:ボーカルでいえば、確かにそういう細かい仕掛けがいっぱいあって。僕らアレンジャーも、ディレクターからみんなで一緒に作りたいと言われていて歌録りに立ち会わせてもらっているのですが、今回僕は歌録り2日目に参加して、スタジオに入って初日のテイクを聴かせてもらって、この曲で何を伝えたいかがわかる歌が録れていたし、録っている側が何をしたいか明確に伝わってきたんですよね。それはメンバーの皆さんのスキルが上がっていたからこそ成し得ることで、僕らはその瞬間を逃さないように切り取る事を意識しました。

桑谷:私はX21のコーラスをデビュー曲「明日への卒業」からずっとやらせて頂いているのですが、最近の感情豊かな歌に合わせてコーラスするのホントに楽しいんですよね。メンバーの皆さんから引き出されるコーラスっていうのもあって。これからどうなっていくんだろうと、わくわくしています。
――そのほかに歌でのエピソードはありますか?

日比野:最後のサビの「まだ目指そう」の三行は、実は2パターン録っていたんですよ。全体の流れでいえばフェイクというか……メロが上がって行くほうが相応しいと思っていたんですけど、そうなると、果たしてライブで歌えるか、という問題もありまして。ただ、そこが上がるか否かで曲の価値が全く違うものになるんですね。アレンジでも、最後に向けてストリングスがクレッシェンド(※段々強くの意)していたり、セクション毎に盛り上がって行く音が録れていたし、ミックスチェックの場でA&RプロデューサーのHさんと相談させていただきまして。

渡辺:そこに関しては、強くお願いさせていただきました。上げると言っても、決してライブで歌えない音程じゃないですしね。ライブなのでその日歌える、歌えないもまた「デスティニー」ですよ。

日比野:ええ、「下げたままにしよう」との意見もあったのですが、心を揺さぶるものにするためにはやはり上げないと。エンジニアの森元さんからも「ここは絶対にメロを上げたほうがいいと思う」と賛同していただき、最終的に各方面の了解を得て、現在の形になりました。これでリスナーの方への刺さり方が全然違うと思いますし、了承して下さった全ての方々が作品に対しての熱い想いを持って下さっていたからこその決断だったと思うので、そこは作り手として感謝の気持ちとそんなチームで制作が出来た事への喜びを感じました。

大西:作曲者としては曲が採用になった後はデモがどう料理されてくるかを楽しみに待つ側になるのですが、今回はありとあらゆる食材をつかったフルコースの料理が出てきた感じでした(笑) 良い歌があって、ほぼ全生のオケ、アイディアの数々、そして想いが重なって音になっているのは今日のこの会話からも伝わってきたので、この先はどこまでこの作品が育っていくのか、育ててもらえるのか楽しみに見守っています。

次回予告

今回はここまで。いよいよ最終回となる次回は「デスティニー」発売日の9月19日更新予定。
もちろん「Code of Canon」&「True Gate」の2曲について迫りたいと思う。「デスティニー」にも負けない作り手の強い想い、そして『ビルド』から、ここまでの熱き道程を総括してもらう予定です。
乞うご期待!!
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初回限定生産盤Bに収録される楽曲の作家、ミュージシャンクレジットを公開!!
■デスティニー
作詞:森月キャス 作曲:大西克巳 編曲:日比野裕史×渡辺徹
Drums:山木秀夫 Guitars,Bass & Programming:日比野裕史
Keyboards & Programming:渡辺徹
Trumpet:佐々木史郎 AltoSax:米田裕也 Trombone:忍田耕一
Strings:矢野小百合ストリングス
Violin:矢野小百合,加藤えりな,柳原有弥 Viola:三木章子
Chorus:桑谷実沙&実谷なな

■Code of Canon
作詞:leonn 作曲:丸山真由子,渡辺徹,日比野裕史,大西克巳 編曲:日比野裕史×渡辺徹
Guitars & Programming:日比野裕史 Keyboards & Programming:渡辺徹
Chorus:竹内浩明,桑谷実沙&実谷なな

■True Gate
作詞:BOUNCEBACK 作曲:BOUNCEBACK 編曲:渡辺徹×日比野裕史
Keyboards & Programming:渡辺徹 Guitars,Bass & Programming:日比野裕史
Chorus:桑谷実沙&実谷なな

『仮面ライダービルド』挿入歌「Ready Go!!」「Evolution」を含むスペシャル音源 、「Burning My Soul」も収録決定!!

■Ready Go!!~Burning My Soul~Evolution
~Accelerated X Linking 21st build mix~
ats-,清水武仁&渡辺徹 Feat.AXL21

作詞:Mio Aoyama,BOUNCEBACK,森月キャス
作曲:ats-,清水武仁&渡辺徹 編曲:ats-,清水武仁&渡辺徹
Sound Produce:Avex Management Inc.,岩渕優輝
Remix:ats-  
Chorus:ats-,桑谷実沙&実谷なな Keyboards & Programming:ats-  
Guitars & Programming:清水武仁 Keyboards & Programming:渡辺徹

詳細な収録情報についてはX21オフィシャルサイトhttp://avex.jp/x21/をご覧ください。

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