2018/12/23公開 アーカイブ

「クリスマスキャロルの頃には」2018年verリリース記念! MONKEY MAJIK × 稲垣潤一、座談会開催!

誰もが知るクリスマスの定番曲、稲垣潤一が歌う「クリスマスキャロルの頃には」。12月5日、MONKEY MAJIK × 稲垣潤一 × GAGLE名義で新バージョン「クリスマスキャロルの頃には -NORTH FLOW-」が配信でリリースされました。今回は、稲垣潤一とMONKEY MAJIKの4人を招いて座談会を開催。 コラボレーションが実現した経緯や、制作秘話などさまざまお話を伺いました。

コラボは夢のまた夢「無理だろうね」

--まずは今回のコラボレーション、どんな形で決まりましたか?

Maynard:「稲垣さんと何かやりたいな」というのはウィッシュリストの一つでした。
仙台出身のお笑いコンビ、サンドウィッチマンとのコラボ曲「ウマーベラス」を構想している頃から実現に向けて動き出しましたね。

Blaise:そうそう。一年前にGAGLEの「FLOW」という曲と出会って、その曲を軸に「いいアイディアがあるよ」というところから少しずつ進んでいって。それが今回のコラボ楽曲という形になっています。

Maynard:そのときに「『クリスマスキャロルの頃には』にこんなアレンジが入っていれば最高じゃない?」なんて話していて。順序としては、その後がサンドイッチマンとのコラボだったんです。実は、稲垣さんにはだいぶ前から「お願いしたい」ってお伝えしていました。

その一方で、「クリスマスキャロルの頃には」は誰でも知っている曲だし、稲垣さんとのコラボなんて夢に過ぎなくて、リメイクするのは無理だろうねって。とはいえ、仙台には素晴らしいレジェンドがいて、せっかくコラボをやるんだったら少しでも仙台のアイデンティティが広がればいいなっていう気持ちもありました。

でも最終的に稲垣さんがOKと言ってくれて実現に。稲垣さんが「おもしろいね」って言ってくれたんですよ。
--稲垣さんはコラボレーションの話を聞いていかがでしたか?

稲垣:以前からMONKEY MAJIKが仙台を拠点にして活動していたことは知っていたんですが、なかなか会うチャンスがなかったんです。
GAGLEさん(仙台在住のヒップホップユニット)とも会う機会はなかったですが。それでサンドウィッチマンとのコラボがあってMVをみた時に、「格好いいじゃん。オマージュな感じとか」って。

そう思っていたら、こういう話がきたんですよ。仙台つながりだし、MONKEY MAJIKに会えるし、いいチャンスだなあと思って。
でも実際、「クリスマスキャロルの頃には」がコラボでどう変わるのかなって。
楽しみでもあるし、どんな感じになるのかなって思っていて。オリジナルでは男女の微妙な関係、距離感が歌われている曲なんですよ。

危惧していたわけじゃないけど、それが変わってしまうのか。またはどういうテーマでいくのかなって。
それからデモがきて、テンポをちょっと落として、しっとりとした感じで。ビートもちょっと違うじゃないですか。
でもすごいしっとりした感じでできあがってきて。「なるほどねー」ってなって。いい感じになったなと。

今回のコラボ楽曲では「過去、現在、未来」というコンセプトで描かれていますが、オリジナル曲の中に出てくる二人の関係性や距離感というのが、まったく同じような感じで切ない感じで描かれていて「良かった」って感じでしたね。

英語含む歌詞が追加

--今回のコラボ楽曲、MONKEY MAJIKパートとして、英語の歌詞含めた歌が追加されています。どんな風にして形になったのでしょうか?

Blaise:「過去、現在、未来」をコンセプトに、最初の方が過去、中盤が現在、そして終盤にかけて未来が描かれているんです。英語の歌詞では、自分の母親のひとつの美しいモーメントで「彼女がいなくなる前に病院で」みたいな、そういうふうな歌詞を作ろうかなと思っていて、そこから日本語のアイデアが生まれました。

TAX:僕も、もともとある作品の世界観に対して、どういうふうに手を入れていいものか悩みました。「クリスマス・キャロル」の物語をかなり読み込んで、映画でも観たりして。どういう風に作品としてコラボレーションさせればいいかなって思っていた中で、ちょっと償いの心というか、そういうものがこの話には必要だなって思ったんです。でもそういう思いを持ちながら、結局どうなっていくか分からないっていう。
完全なる答えを作らないで進んでく話っていうようなものを、クリスマスって時期に届けたいなと。

昨日僕、たまたま仙台で開催している「光のページェント」を観ていたんですが、18時になると、暗い中で光が点灯する瞬間に「クリスマスキャロルの頃には -NORTH FLOW-」が流れるんです。そこには幸せなカップルだけが歩いている訳ではなく、それぞれストーリーがきっとありますよね。クリスマスって、何も心温まるハッピーなものじゃなくてもいいんじゃないかって思って。

でも人生のその時しか訪れない印象深い時間でもあるわけですから。幸せになるためにいろいろな経験をしなきゃいけない、幸せになるためにそういう時間があるんだってことをテーマに歌詞を書きました。

Maynard:リメイクっていつも思うんですが、元の歌が良くなければいい曲にならない。逆にオリジナルソングがすごく良いと割と楽というか、あまり間違うことはない。結局メロディーが素晴らしいし。でも今回の場合、ご本人が歌を歌うってOKが出た時に「これはやばいな」と。何しても大丈夫って意味ではないけど、なんかちょっとそこはほっとして。あまり気にせずに歌えるなと。
本当に心を込めて歌えば伝わるんだなと思っていい気持ちで臨めました。


--完成された曲を改めて聞いてみていかがでしたか?

DICK:やはり稲垣さんのバージョンを何回も耳にしているので、ものすごく印象が強くって。アレンジで雰囲気はがらっと変わりましたけど、稲垣さんの声って当時と変わらなくて「あの声だ」ってびっくりしました。

MONKEY MAJIK一同:びっくりしましたね(笑)。

稲垣:僕は逆に、MONKEY MAJIKが歌ったデモを聞いたときに、僕が歌うパートを二人が既に歌っていて、「別に俺が歌わなくてもいいじゃないか」ってくらいの完成度をしていたんですよ。
これに僕のボーカルが乗るとどうなるのかなって、そのときは分からなかったですけど、歌詞を乗せてみてミックス聞いて、良い感じになりましたね。
—流麗なピアノやストリングス、そして今の時代のキックの強さ。今回リメイクするにあたって特にこだわったポイントを教えてください。

Blaise:すべてのエッセンスをキープできるような音を作りたかったです。よく聴くとミックスビートは少しずれています。GAGLEさんのサウンドをキープしつつ、ストリングスでクリスマスの美しさも表現したかった。80年代の雰囲気も入れたくて、コーラスボイスとかにはいろんな色を。
みんなのニュアンスをすべて入れたかったですね。

Maynard:コラボレーションはオポチュニティー。新たなインスピレーションをもらえるチャンスだと思って。今回はビートのアレンジや、GAGLEのジャジーな切ないラップとか、稲垣さんのクリスタルボイスにインスパイアされましたね。

Blaise:一つやりたかったことがあって。「過去、現在、未来」というコンセプトだったので、最初は、発売当時の稲垣さんの声。途中から今の稲垣さんの声に変えたかったんです。

一同:(笑)

稲垣:ミックスはいつもみんなでやっているの?

Blaise:まずは4人でやって、仕上げはエンジニアさんが綺麗にしてくれていますね。

—最近では、日本の80年代歌謡曲が評価されていますが、今回は意識されましたか?
Maynard:僕らは「クリスマスキャロルの頃には」が大好きで、稲垣さんも大ファンで。正直、僕は80年代も90年代もリアルタイムに日本にはいなかったですが、ただ日本に来ると、この曲っていつもかかっているじゃないですか。

そういう中で稲垣さんが仙台の人というのは知っていて、純粋にコラボができたらいいなとは思っていましたが、どこかで意識はしていたかもしれません。

実はクリスマスソングになるはずではなかった!?

--「クリスマスキャロルの頃には」の発売は1992年。
歌い継がれていく中で、何かエピソードはありましたか?

稲垣:そもそも「クリスマスキャロルの頃には」の歌詞はドラマ用に書かれたものですが、クリスマスソングにもなるはずの曲ではなかったんです。シングル2曲のうちの1曲という程度で。

MONKEY MAJIK一同:え!

稲垣:僕は当時、夏休みとかで仙台にいて。東京からディレクターとマネージャーが来て、その2曲のデモを仙台のスタジオで制作していたんです。それをディレクターとマネージャーが持ち帰って、秋元(康)くんに聞かせたらすごく気に入ってくれて。さらにドラマのプロデューサーが気に入ってくれて、それでクリスマスソングになったんですよ。そのドラマの展開もまさに、二人の距離感が微妙で、「僕たちはクリスマスの頃にはどうなっているんだろう」って。歌の世界もそうだけどドラマとリンクしていたんですよね。

MONKEY MAJIK一同:へえ〜!

稲垣:それと僕はデビュー以来、ディレクターは変わらずずっと二人三脚でずっとやってきたんです。このディレクターが鬼のような人で、いい曲を作るためだったら、どんなことでもしてしまうという(笑)。

「クリスマスキャロルの頃には」は最初、カセットテープでデモを作ったんですけど。
最初に聞いたときに、「サビがすごくいい」って思ったんですよね。でもサビ以外が見劣りしたんですよ、サビが良すぎて。そこから直しを気の遠くなるほどお願いして。普通だったら、サジ投げちゃうくらい何十回も直してもらって。これだけで何カ月もかかったんです。

それにディレクターもなかなか納得しない人で。最後は僕と作ってくれた二人で取り掛かってやっとできあがったんです。できあがったときに「これはいい詩が乗れば必ずヒットするな」「ヒットソングになるな」って見えていたんですよ。

それで、ドラマで使っていただくって流れがあって。秋元くんに歌詞をお願いすることになって、「クリスマスキャロルの頃には」って、8回出てくるんですが、しつこいんですよ(笑)。秋元くんに「しつこくない?」って話をしたら「このしつこさがいいんだよ」って。普通なら僕も詞を直したりするんだけど、秋元くんの意見を尊重して直さずに。秋元くんも珍しくこの曲に関してはほとんど直してないみたいだったんです。

2011年震災の影響がさまざまなところに

--ヒップホップユニットGAGLEともコラボしましたが、MONKEY MAJIKはこれまでコラボしたことはありましたか? 

Maynard:8年前にコラボしましたが、実はその前からずっと友達で。2003年くらい、インディーズの1枚目くらいのときに出会ったんです。

Blaise:より仲良くなったのは、東日本大震災後のボランティアを一緒にやってから。

Maynard:震災直後は、知り合いの会社に泊まったりしながら毎日ボランティアを。みんなで合宿のように一緒に住んでいました。そこから毎日バスに乗って石巻に行って。それまでは、仙台を拠点にしているって「変わっているな」と思われていたんじゃないかなって思っていたんですけど、今はとても深い意味になったというか。

稲垣:震災の影響っていろいろありますよね。今回のコラボも、その震災が少なからず影響していると思います。僕も仙台で生まれ育って。東京で活動はしているけど、ずっと仙台への思いっていうのがあって。震災では最初何もできなかったけど、年々の役回りというのがあると思っているんですが、この歳になったからこそ仙台に恩返しというか、できることはやっていかなくちゃいけないっていう。震災が起きてからそれがより強くなった。

また、僕自身もそうですが、コンサート会場に足を運ぶお客さんたちも、震災以降は変わったと思います。東北以外の地域に住んでいる人たちも震災で意識が変わったんじゃないかな。

--震災はいろいろな影響を与えたわけですね。
話は戻りまして、GAGLEさんのラップのリリックを聞かれてみていかがでしたか? 

TAX:やられたなって思いました(笑)。先にHUNGERが書いてきてくれて、彼の世界観を見せられて。もちろん秋元さんの世界観もあって。正直これどうしようって(笑)。言いたいことが全部詰め込んであるなって。

さらにこれを、違った感情が生まれるような言い回しだったり情景だったり。そういうものを連想させるように一つの形としてまとめるのは大変だなって思ったんですけど、どちらも洗練されているので、それがない方がかえって見えやすいって部分もあったんです。

そもそもこんなに偉大なクリエイターの人たちと一緒に仕事させてもらえるのはとても光栄で。楽しみながら取り組むことができました。

稲垣にとっても新鮮だったコラボ

—冒頭で「ミックスビートがずれている」というお話がありましたが、今回は変わった音使いをされていますよね?

稲垣:僕は、本当はジャストなビートが好きなんだけど、でも今はクオンタイズしないビート感。まあビート感といってもいろいろあるじゃないですか。音源によっては、どこでビートの中心がくるビート感なの分かんないとか。でもそれも味の一つだから。僕は全然こだわらない。かっこよけりゃいいっていう。

Blaise:このずれは聞くと最初はなんか気持ち悪い。でももうどんどん慣れちゃう感じ。

DICK:ベースもやっちゃいけないことやったからね(笑)。ドラムはハーフシャッフルなのに、フルトリプルでやっているからね(笑)。

一同:笑

稲垣: MONKEY MAJIKのビート感とグルーブはやはり新鮮でした。もともとの「クリスマスキャロルの頃には」は8ビートじゃないですか。今回のコラボ曲を最初デモテープで聞いたときに、テンポを落としてこういうグルーブ感できたなってすごく新鮮でした。


—今回、サブタイトルに「NORTH FLOW」と付いていますが、ここに込めた意味は?

Blaise:「FLOW」にはいろいろな意味があります。1年前に聞かせてもらったGAGLEの「FLOW」という曲のスピリットをキープしていたり。「NORTH」は、北の方。東北かもしれないけど、カナダかもしれない。

ライブでの披露の可能性は?

--この仙台コラボレーションはまだ続いていく予定ですか?

Maynard:仙台コラボレーションは狙ってやっていたわけではないので、次は仙台ではないかもしれません(笑)。稲垣さんがコラボを引き受けてくださったおかげで、新しいことが動き出しているのでとても感謝しています。

稲垣:不思議なのが、出身はカナダで、青森で活動していて仙台へ。そんななかで日本人の琴線に触れる曲作りをしている。曲作りは昔からしていたんですか?

Maynard:ルーツはカナダですが、実家が音楽一家だったので、家の中に楽器はあったんです。でもソングライターとして日本で勝負しようってまったくなくて。真面目に曲を作ろうってなったのが日本に来てからで、影響はほとんど日本。ラジオで聞いてCD買いに行ったり、CMで聞いて知ったりという感じです。

--今回のコラボ曲はライブでも披露されたりするんでしょうか?

Blaise:僕らがちょうどツアー中で、稲垣さんとお互いのスケジュールを見せ合っていたんですが「全然無理じゃない!?」って。
でもいつか一緒にできるように、シンプルバージョンですが、今ちょうど披露しています。
結成20周年ライブのときにもし稲垣さんが来て下されば、一緒にステージに立って披露したいです。

--みなさん、ありがとうございました!

一同:ありがとうございました!
インタビュー:ふくりゅう

稲垣潤一 Official Site
http://www.j-inagaki.com

MONKEY MAJIK Official Site
https://www.monkeymajik.com

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